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ウエストウッディオオシカクワガタの飼育と産卵について

このブログでは難関種と言われるウエストウッディオオシカクワガタの飼育に初めて挑戦しようとしている方向けに、私の経験や先輩ブリーダーからお伺いした話をもとに、飼育方法を説明させていただきたいと思います。なお、参考までに筆者はアルナーチャル・プラデーシュ州DV産の飼育をしています。
飼育方法に他の産地との違いはあまりないとは思いますが、念のため。

ウエストウッディオオシカクワガタの特徴

ウエストウッディオオシカクワガタの外見的な特徴はオスの上下、左右と立体的にカーブするアゴです。多くのブリーダーを魅了してやまないのがこの外見ではないでしょうか。


大きさはオスは大きなもので90mm以上、メスは大きな個体で50mm前後です。
幼虫期間はオスは1~3年、メスは1~2年。
ブリード個体の成虫の販売価格はペアで20万円~30万円程度
メス単体では10万円強といったところ。オス単体はあまり見かけませんが80mm以上の大きい個体は13万円~といったところでしょうか。

ワイルド個体はその年の入荷数によって値段が大きく変動し、ペアで40万円近くすることもあります。

ブリードのポイント

ウエストウッディは近年は飼育方法が確立されつつあるとは言え、初めて挑戦される方にとっては多くの関門があります。
ここからは、ウエストウッディのブリードを以下のポイントに沿って説明します。

1.ウエストウッディオオシカクワガタの購入について
2.適切な温度管理
3.ペアリング
4.産卵セットの組み方
5.幼虫の管理
6.羽化までのタイムスケジュール

ウエストウッディオオシカクワガタの購入について

ウエストウッディは成虫と幼虫の販売があり、幼虫は成虫と比べてかなり安く買うことができます。
しかしながら、詐欺行為が多発しており、初心者の方には基本的にはおすすめしません。ウエストウッディのブリードに慣れ、信頼できるショップや知り合いのブリーダーができてから、検討することをおすすめします。

では、成虫のワイルド個体かブリード個体を買うかですが、初心者の方にはブリード個体がおすすめです。
ワイルド個体は血の入れ替えの観点からとても魅力的なのですが、ワイルド個体は寿命の予測ができず、購入直後に星になるといったことがあります。ワイルド個体からブリードしたWF1は非常に価値があるため、ワイルド個体からのブリードにチャレンジすることはウエストウッディ飼育コミュニティにとっても非常に価値のある尊い行為なのですが、失敗するリスクも高いです。
従いまして、このブログではブリード個体の購入を推奨します。

 なお、購入時期ですが、産卵に適した時期が5~9月のため、春頃に購入しようと考える方もいるかもしれませんが、筆者は9月から12月に買うことをお勧めします。
理由は3つあります。一つ目の理由はウエストウッディの生体がブリーダー同士の取り合いになること、二つ目は休眠したことを自身で確認できること、三つ目は輸送時の生体へのダメージ軽減です。
それでは三つの理由を詳しく説明します。

ウエストウッディオオシカクワガタを9~12月に買うべき理由①
・生体がブリーダー同士で取り合いになる

ウエストウッディの生体は蛹からの羽化後、冬の休眠期間を終えてからブリード可能となるのですが、ブリードしやすいのは5~9月に羽化した個体です。これはブリードするには生体が十分に休眠し成熟している必要があるのですが、休眠期間は羽化してから6~12か月必要となるため、産卵に適した5~9月から逆算して初夏から夏(5~9月)に羽化した個体がブリーダーの中でも好まれます。この初夏から夏にかけて羽化した個体が売りに出されるのが概ね9月頃です。ブリードに適した個体は早い者勝ちですので、9月くらいからショップのWEBサイトを確認したり、メール等でコンタクトを取ると良いでしょう。

ウエストウッディオオシカクワガタを9~12月に買うべき理由②
・休眠したことを自身で確認できること

ウエストウッディオオシカクワガタのブリードは生体が成熟していることが必須条件です。成熟させるためには十分な休眠期間が必要なのですが、それを自分で確認するために9月から12月に買うことをお勧めします。休眠のためにはワインセラーなど10度以下の環境を用意する必要があるため費用がかかりますが、確実に休眠させるということは非常に重要です。

ウエストウッディオオシカクワガタを9~12月に買うべき理由③
・輸送時の生体へのダメージ軽減

ウエストウッディオオシカクワガタの飼育温度は20度程度ですが、輸送時は20度に保つことができるとは限りません。特に夏場は外気温が30度を超え、宅配業者の事業所やトラックの温度もかなりの高温となっていることも想定されます。ウエストウッディは低温には強く、0度を下回らなければ大丈夫ですが、高温には弱いです。従いまして、輸送時の温度が生体に及ぼす影響を少しでも軽減するために、9~12月に生体を購入することをおすすめします。

また、生体を購入する際に羽化した日は売り手から確認できると思いますが、羽化後間もない時期は体が固まってないので、少なくとも2か月程度は輸送すべきではありません。羽化して1か月程度の生体を買うのは控えた方が無難です。

適切な温度管理

ウエストウッディオオシカクワガタの飼育温度は20度前後となりますが、ライフステージによって少しづつ管理方法が変わります。ここでは冬季の休眠時、休眠から起こすタイミング、ペアリングに分けて適切な温度管理を説明します。

ウエストウッディは羽化後、2か月程度たった後休眠させる必要があります。休眠するための温度は10度以下が目安です。この時注意したいのが、徐々に温度を下げるということです。筆者は2週間で2度のペースで温度を徐々に下げています。ですので、20度から10度まで下げるのに2ヶ月以上かけていることになります。ワインセラーは2温度管理できるものがいいでしょう。また、容器についてですが、羽化した蛹室に木片などをかぶせ、その上に水分を含ませた水苔やキッチンぺーパーを被せています。ワインセラーの中は乾燥しやすく、酸欠のリスクもありますので、2週間に1回程度、容器内が乾燥していないか確認し、乾燥していたら霧吹きで加湿します。また数日に1回はワインセラーの扉をあけ、酸欠防止のため空気を入れ替えています。ウエストウッディを休眠から起こすタイミングですが、私は3月初旬くらいからワインセラーの温度を2週間で2度程度のペースで上げていきワインセラーで18度の気温となったら、2週間経過後に、室温20度の部屋に出し、生体が活動を開始するまで待ちます。

ペアリング

成虫が活動を開始するようになったら、ゼリーを与えます。活動を開始してからすぐ後食する個体もいれば、2週間くらい経ってから後食する個体もいます。筆者は後食後、20日後を目処にペアリングをしています。メス殺しの報告もありますので、念のためオスはアゴ縛りをしておきます。私はナイロンバンドを使用してアゴ縛りをしています。ペアリングはハンドペアリングを行います。オスの前にメスを置き、しばらく見て確実にペアリングしていることを確かめましょう。1回でうまく、かかることもあるのですが、目視でペアリングを確認した上で、4日程度同居させます。ここで失敗すると1か月近く時間をロスすることもありますので、しっかりペアリングを確認しましょう。

産卵セットの組み方

産卵セットはマットを3㎝程度硬めに敷き、その上に産卵材を置きます。
産卵材はVN材を入手した方が良いです。VN材は1本4千円~8千円程度と大変高価ですが、成虫ペアが20万円以上はすることを考えれば、ここで妥協して失敗しては全てが水の泡です。
 なお、私が試した中では、天然カワラ材、霊芝材でも産卵しました。VN材をメインに考えつつ、予備としてこれらの材を用意しておくと良いでしょう。また、産卵セットは湿度が高いためカビが発生しやすいので、産卵材はバクテリア化しておいた方がいいです。バクテリア材の作成開始時期は休眠期間終盤当たりです。もともと柔らかい材を使うためそれほど長い期間マットに漬けておくことはしません。材が柔らかさにもよりますが、3〜7日程度です。
 容器はホームセンターやダイソーで売っている20L~25Lのバックル式の衣装ケースが便利です。このような衣装ケースに材を縦置きや横置きで4~6本置きメスを投入します。また、ゼリーも1週間分程度置きます。この時の気温は20~22度の間で変化する程度がいいです。ときどき23度くらいになっても大丈夫です。また、メスをセットしたら1週間程度、できるだけ暗く、静かに放置するのが良いです。

1週間放置したあと、材をかじった跡があればそれをピンセット等で慎重に掘って卵があるか確認しましょう。卵はその場で取る人もいれば、孵化してから取る人もいますが、各々のメリットデメリットは以下の通りです。
採卵するメリット
・卵が日に日に増えるためテンションがあがります。
・卵をカビから守る。材にカビが発生している場合は、カビに侵食される可能性があるので、卵をとった方が良いでしょう。なお、バクテリア材を使用すればカビの発生は抑えられます。

採卵するデメリット
・時間がかかる。産卵セットは2,3か月セットしておくので採卵するのに結構な時間がかかります。
・卵をつぶす。ピンセットで材の埋め戻しを掘るとき卵を気づ付けてしまう可能性があります。卵をつぶしてしまうと自身も精神的ダメージを負います。

卵がとれない・孵らない場合
ウエストウッディはメスが卵を全く産まないことや、あるメスから生まれた卵がことごとく腐る、ということがよくあります。このような場合は、再度ハンドペアリングをしてみます。それでも結果が変わらない場合はオスを変えてペアリングをしてみます。しかし、私の経験上、これらのことをしたからといって状況が改善することは少ないです。オスメス1匹づつのペアだと1匹も幼虫がとれないということが起こりえますので、せめてメスは複数用意したいところです。

幼虫の管理

採卵する場合はプリンカップに入れたマットで卵を管理します。
約1か月で孵るため、幼虫は2令になるまでの2~3か月間マットで管理します。私はブナのマットを使用しています。
幼虫が2令になったらオオヒラタケかカワラタケの菌糸ビン800mlに入れます。私はカワラタケ菌糸瓶は瓶交換のとき力が入りすぎて幼虫を傷付けてしまうのが怖いので、柔らかめに詰めたカワラ菌糸か、オオヒラタケ菌糸を使用しています。ウエストウッディはあまり菌糸をたくさん食べる種ではないため菌糸瓶の食痕が7割を超えるといったことはあまりありませんが、4か月くらいたつと菌糸瓶が劣化しますので、そのタイミングで掘り起こします。掘り起こした後は半数は新しい菌糸瓶、もう半数はブナのマットの瓶に移し替えます。オスは1400ml、メスは800mlに入れます。一般的にはオオヒラタケやカワラタケを使用していると聞きますが、マットでもそれなりに大きく育つという話もききます。私はマットの方が断然管理が楽なので、半数くらいは2本目からマットです。ただ、今後の結果を見てやり方を変える可能性があります。

羽化までのタイムスケジュール

参考までに私がブリードしやすいと思う羽化までのタイムスケジュールは以下の通りです。
 6~8月    産卵セット投入
 7~9月 羽化
 9~翌1月 菌糸瓶投入
 翌2~4月  2本目投入(菌糸瓶、ブナマット ) 翌6〜9月、翌々3~6月 羽化 

以上、ここまで読んでいただきありがとうござます。

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